埋蔵文化財センターでは、毎日のように市内のどこかに出かけて、試掘調査というものを行っています。
これは、埋蔵文化財包蔵地というエリア内で、建物が建てられるようなときに行うもので、地中をトレンチと呼ばれる長方形の箱型に穴を掘って、その場所に遺跡があるかないかを調べる調査です。
このような試掘調査では、あまり大きな土器や珍しい完形品(欠けていない完全な形の土器)などはほとんどありません。大抵は手のひらに乗るぐらいの小さな破片の場合が多いのです。しかし、たまには大量に土器が投棄された状態を見つけたり、出土例が少ない貴重な遺物が出土したりします。ただし、本格的な発掘調査ではないので、出土の記録は残りますが、あまり表に出ることが少ない遺物たちです。
今回は、大量でも貴重でもなく、試掘調査で出土したちょっと珍しい遺物をご紹介します。
松山市内の南久米町で行った試掘で出土した14~15世紀の土師器の坏です。写真下の三つは土師器の坏ですね。底部が糸切りとヘラで切り離されてます。
そして下の写真がやや大きい器です。
これは口径14.8cm、器の高さ5cm、足の高さは1.5cmあります。
器の底部には三っつの三角脚が張り付いてます。
文様は写真でもわかりますが、外側に荒い線刻の沈線が4条巡って、線刻の間に円形の陰刻があり、その周りには半円形状の刺突列点が施されてます。
なんか菊の花のようにも見えます。
同時に出土した土師器からも時代は14~15世紀のものと思われます。さて、この土器はいったい何なんでしょう?
3脚付きの坏?、鉢?、皿?
関係者からは『香炉』説が有望で、ただその後二年以上たちますが、いまだ同じものには出会えておりません。珍しい出土例だと思います。
また、機会がありましたらこのような、試掘調査であったちょっと気なる話をします。