松山市考古館の常設展示品のなかには、実物大に復元された竪穴建物内で石庖丁に常用される砥部の青石(=緑色片岩)を割るモデルがあります。
円形の竪穴建物内の炉のかたわらでは、男性(このイエの主かな?)が掌大の緑色片岩を作業用の台石に乗せて、その上から石のハンマーで割っている様子を実際に見ることができます。
両腕に甕を抱えた女性(主の奥さんかな?)が煌々と火がともった炉に向かっているところから、コメと水で粥を作ろうとしているのでしょうか?
さて、男性の左手には緑色片岩の原石がしっかりと握られ、“両極打法”と呼ばれる割り方で石庖丁に適した厚みの素材を今まさに得ようとしている場面をこの展示は示しています。
緑色片岩は原石採取地(砥部川下流域)から8~10㎞も離れたムラへ持ち込まれ、手作業で割って得た素材を砥石で磨いて仕上げ、紐通し用のふたつの穴は石錐で時間をかけて両面から開けられました。
参考までに、筆者は数年前、石庖丁作り体験に参加したことがあります。慣れていないことや石の目に沿って割ることが難しかったこともあり、変なところで割れてしまい必要な大きさや厚さを確保することが困難でした。また、穴を開ける途中で筋状に走る石英の結晶(硬質)にあたってしまい四苦八苦した記憶があります。
今月中旬から始まる“はじめての考古学教室2期”の第1回では、「石庖丁と松山の遺跡」というタイトルで、遺跡から出土した石庖丁の実物を前にして、弥生時代の石器を代表する石庖丁の見方についても紹介します。