弥生人は、どこでどのような状態の石材を入手して、穂摘み用の「石庖丁」を製作していたのでしょうか?
この問いに対して各地で様々な検討がおこなわれています。
この数年間、筆者はまつやまの弥生時代前半期に該当する主要遺跡の石庖丁とその未成品、さらに原石など、収蔵庫に保管されているものや常設展示中のものを含めて、再度観察をおこなってきました。
図を描き(実測図作成)、原石・各段階の未成品・完成品の順で並べ、想定される原石採取地も調べたところ、松山の弥生人は砥部川下流で手頃な大きさの緑色片岩を意識的に選別採取し、約10㎞も離れた集落へ原石を持ち込んだのち、穂摘み用の石庖丁を製作していた可能性の高いことがわかりました。
弥生人はやや厚手の原石を好んで採取し、集落内で分割していたこともわかり、この分割された素材をもとに製作された石庖丁は全体の6割も占めていました。
石庖丁とその関連資料から、地元の石材を大いに活用し、緑色片岩の石質を巧みに利用した“石庖丁素材獲得法”の一端を垣間見ることができました。
収蔵庫に眠る出土品の再検討を通じて、これまで未知の弥生人の行動パターンの手がかりが得られましたので、今後は石器生産にかかわる新たな情報発信につなげたいと考えています。