報告書刊行に向けて整理等作業を進めている実際のケースを例に挙げながら、松山市立埋蔵文化財センターの建物内で担当調査員がどのように取り組んでいるかを10回シリーズで紹介する、今回はその2回目。
発掘作業中、さまざまな遺物が発見されますが、その多くは土器です。小さな破片が大半を占め、破片を1点と数えると、整理等作業ではおよそ10,000点を数えることができました。この中から、発掘調査した遺跡の性格などを明らかにする上で、重要な土器を選別して、これを台帳に登録します(継続中!)。
では、土器の観察はどのようにおこなうのでしょうか?小さな土器片の場合は、その土器片を手に取り、目を凝らしてオモテやウラをよく見ることです。観察のポイントは、土器の製作にかかわる痕跡や、土器の材料となる粘土に混ぜた混合物を見つけることです。
写真は、台帳登録番号29-150-5の土器のオモテとウラを撮影したものです。およそ3.5㎝四方の小さな破片で、ちょうど消しゴム位の大きさです。これを手に取って目を凝らすと、土器のウラには横方向に細かい筋がいくつもあることに気付きました。この筋は、土器を製作するときに余分な粘土を掻き取った道具が「貝殻」であった可能性が高いことを示すものです。
また、土器のオモテやウラ、割れ口には長石とよばれる白い長石の細かいものがみられます。これは粘土のひび割れ予防や土器の耐久性を高めるために粘土に混ぜた可能性が高いと考えられます。
これらの情報は、縄文人の土器製作に対する工夫や知恵を具体的に示す一例です。今日も私は小さな土器の破片を観察して、縄文人が遺した些細な情報を記録に残し、発掘調査報告書に掲載する出土遺物のデータを収集しています。