運動が高齢者の日常生活や健康に大きく影響していることは以前から知られていましたが、2019年にオーストリアのウィーン医科大学は65歳以上の高齢者3,308人を対象に「運動」と「ADL(食事や入浴などの日常生活動作)」の関係を調べました。
ヨーロッパでは高齢者に対して健康増進のための運動の基準が示されているのですが、この基準を満たしている人は「ADL」を実行できる能力が3倍もあるという結果が出たのです。また、掃除や料理、買い物など「ADL」より少し複雑な動作を「IADL(手段的日常生活動作)」と呼びますが、先述の運動の基準を満たしている人は「IADL」を実行できる能力が2倍に達したのです。
松山市では県からの不要不急の外出自粛要請が続く中、運動不足の方も多いと思います。特に高齢者の方は運動不足が原因で「フレイル(虚弱)」が進み、筋肉や骨、関節などの病気や衰えにより歩行や日常生活に支障が出る「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」になる可能性も高くなっていきます。
ロコモティブシンドロームの予防の為には運動をして骨や筋肉を使うことが大切です。自重を利用した筋力トレーニング(スクワットや腕立て伏せ)、自宅の階段を利用した有酸素運動などでできるだけ体を動かし、健康を維持できるよう心がけましょう。
◆ロコモティブシンドロームとは
ロコモティブシンドロームとは日本整形外科学会が2007年から提唱している概念で、英語で移動することを表す「ロコモーション(Locomotion)」、移動するための能力があることを表す「ロコモティブ(Locomotive)」から作られた言葉で、移動するための能力が不足したり、衰えたりした状態を指します。