リオデジャネイロオリンピック28競技306種目の中でも花形種目でもある陸上競技男子100m。世界記録保持者のウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)が9秒81で制し、この種目でオリンピック史上初となる3連覇を達成しました。
陸上競技短距離種目の選手達が全神経を集中してスターティングブロックに足をセットし、テレビの前の私達も息を凝らしてその瞬間に注目するスタート。スターターの「On your marks(位置について)」「Set(用意)」の合図の後に「パァン!」と響き渡るそのスタート音にはある工夫がされているのを皆さんはご存知ですか?
従来のスターターピストルは引き金を引くと音が発せられると同時に、その音を競技者の後方に設置したスピーカーからも発し、全ての位置の選手達の耳に届きやすくなるよう工夫してありました。しかしこの仕組みを採用しても競技者は後方に設置したスピーカーからの音よりも、スターターが持つピストルからの実際の音が耳に届くのを待ってしまい、ピストルから一番遠い選手は音が最後に届くため不利に働いていたのです。
この仕組みが採用されていた2000年のシドニーオリンピックでは、第9レーンを走る男子200m・400m元世界記録保持者のマイケル・ジョンソン選手(アメリカ)のスタート合図への反応速度は0.44秒、他の選手達の平均反応速度0.13~0.14秒より大幅に遅かったことがきっかけともなり、2010年のバンクーバーオリンピックからピストル本体からは音の出ないピストルが採用されるようになったのです。
ちなみにリオデジャネイロオリンピックで使われているスターティングブロックはスターターピストルとリンクしたスピーカーが1台ごとに装備されているため、選手達はまったく同時にスタートの音を聞くことができるようになっています。他にもフライングを検知するスターティングブロックのセンサー、司令室のパソコン、写真判定用のカメラなどと連動しており、これらが一斉に動き出すスイッチの役割もしているスターターピストル。このお話しを参考にスタートの「パァン!」という音にも注目して陸上競技をご覧になって下さいね。