掩体壕は、太平洋戦争末期に造られた航空機の格納庫です。垣生・南吉田地区に63基造られましたが、現在は3基しか残っていません。このうち1基が平成30年に松山市の指定有形文化財に登録されました。今回の調査は、掩体壕の整備工事及びその許可に先立って、掩体壕の保存に及ぼす影響を事前に把握するために令和2年6月15日~6月26日の間、確認調査を実施しました。指定された掩体壕は、主翼格納部の前部アーチと尾翼格納部の後部アーチの大小二つのかまぼこ型アーチを合わせた形態となっています。
調査の結果、掩体壕の前部アーチの外側と内側に排水施設である暗渠を確認しました。外側には前部アーチの基礎部に敷かれた川原石が基礎下50㎝、基礎部から外側1mまでに敷かれ、暗渠として掩体壕入口の排水の機能を果たしていることが分かりました。前部アーチ内では、薄く川原石が敷かれた溝状の暗渠5条が見つかりました。暗渠は前部アーチの中心に1条と、その両側に2条ずつを2.9mの間隔で平行に並べています。規模は幅50㎝~60㎝、深さ20㎝、長さ5.80mを測ります。これらの暗渠は掩体壕入口の基礎下の河原石に接続されていることから、掩体壕内の排水を担っていると考えられます。暗渠の発見は『昭和19年築城施設教範草案』第二編航空基地施設、第二章陸上航空基地、第七節飛行機置場、第九十四のなかに「掩体内の掘開部は適当なる排水方法を講ずるを要とす」とあり、これを検証するものとなりました。